脳科学と心理学の違いや共通点・将来性について解説

2023.06.20
5,140
  • share
  • share
  • share


近年、さまざまな分野への応用が注目されている脳科学ですが、似たような学問として心理学があります。

脳科学や心理学を応用することで人間の考え方や感情に寄り添ったアプローチができるため、両者ともに、より効果的な商品開発やマーケティングなどへの活用も積極的に行なわれています。

この記事では、脳科学と心理学の違いや共通点について解説し、双方の将来性について解説します。

脳科学とは


脳科学とは、脳の構造や生理作用などについて研究する学問です。対象とする脳機能としては次のようなものが挙げられます。

【感覚入力の処理】
・視覚認知
・聴覚認知

【高次認知機能】
・記憶
・学習
・予測
・思考
・言語
・問題解決
など

脳科学は医学分野での活用はもちろんのこと、機械工学やマーケティングなどのあらゆる分野で活用・応用されています。脳科学についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事もおすすめです。

マーケティングにも活用される脳科学とは?今後どのような将来性があるのか

心理学は2種類に分けられる


心理学とは、人間の心に関して科学的に研究する学問で「行動の科学」とも呼ばれています。

心は実体がないため、さまざまな手法でアプローチされており、複数の分野が存在します。大きく分けると「基礎心理学」と「応用心理学」と呼ばれるものがあり、ここからはそれぞれについて詳しく見ていきましょう。

基礎心理学

基礎心理学とは、人間の心の状態と身体への反応の関係性にアプローチする分野です。誰もが持つ心の仕組みを一般法則として理論的に研究・解明します。基礎心理学には次のような分野が挙げられます。

・生物(生理)心理学
・認知心理学
・発達心理学
・学習心理学
・社会心理学
・パーソナリティ心理学
など

生物(生理)心理学や認知心理学では、人間の脳機能を扱うこともあるため、一部は脳科学にも属しているといえるでしょう。
また、なかには人間だけでなく動物の実験によって研究を進める場合もあります。

応用心理学

応用心理学とは、基礎心理学をより実生活に近い環境に応用する分野です。心理学を学問としてではなく、私たちの生活をより豊かにするために活用(応用)するものといえるでしょう。該当する分野としては次のようなものが挙げられます。

・臨床心理学
・産業心理学
・教育心理学
・災害心理学
・犯罪心理学
・スポーツ心理学
など

臨床心理士や公認心理師によるカウンセリング治療は、臨床心理学に基づいて行なわれています。

応用心理学は私たちの生活の身近にあり、映画やドラマ・小説などで目にする心理学もほとんどが応用心理学といえるでしょう。

心理学と脳科学の違い


心理学と脳科学はお互いに近い領域を研究していることもあり、双方の違いがよくわからないという方も多いでしょう。心理学と脳科学の違いは「研究対象」と「アプローチ方法」にあります。

研究対象の違い

心理学では、人の行動のトリガーとなる心理作用が心であるととらえ、発言や行動に対しどのような心が働くか、客観的な視点で分析して解釈を試みます。

対して、脳科学は心ではなく脳や神経が研究対象です。
人の行動のトリガーとなりえるのは、神経伝達物質などの移動や脳の電位変化であると考え、それらの動きを計測して分析し解釈を試みます。つまり、人の行動のトリガーとなる要因を心で見るか、脳で見るかという点が双方の違いといえるでしょう。

アプローチ方法の違い

例えば治療に用いる場合、心理学では患者の発言や行動から原因を突き止め、患者自らが認知や行動を変化させられるようにサポートを行ないます。

対して、脳科学では脳や神経に原因を見つけ、薬剤投与や電気刺激などによる治療を試みます。

ここでも、双方の研究対象の違いによるアプローチ方法の差異が見られます。
心(感情)の改善による治療を試みるのか、脳機能の改善による治療を試みるのかといった違いです。

心理学と脳科学の共通点


心理学と脳科学は異なる学問であり、研究対象やアプローチ方法も異なります。しかし、人間の思考や行動、認知、感情を理解するという点は共通しています。

「心がどこから生まれるのか」ということを考えた場合、脳の存在は欠かせないものであるため深い関係にあることはわかるでしょう。

実際に心理学のなかでも生物(生理)心理学や認知心理学では脳科学の要素を含んでいるため、心理学と脳科学には多くの共通点があるといえます。

心理学と脳科学の将来について


心理学・脳科学ともに急速に研究が進んでおり、さまざまな分野への応用が期待されています。

医学分野を例に取ると、脳科学の場合はアルツハイマー病やパーキンソン病などの脳疾患に対して、新しい治療方法の開発に役立てられています。

心理学はうつ病や不安障害などのメンタルヘルス問題の新しい治療法の開発に役立てられており、私たちの病気や障害を治療するものとして必要不可欠なものになっているといえるでしょう。

また、ビジネスの分野でも「行動心理学」や「ニューロマーケティング」などに応用されています。これらはより効果的な訴求の実現や商品開発に活用され、ビジネスを発展させるうえでも欠かせません。

人間が生きていくうえで心や脳の存在は非常に大きなものであり、心理学・脳科学の研究が進むことで私たちはより深く自身の心・脳について理解できるようになります。

前述のとおり、これらの学問がもたらす効果は大きくさまざまな分野に応用が可能です。より豊かな生活・人生を送るうえで欠かせない学問であり、今後も発展し続けることでしょう。

まとめ

脳科学は脳の構造や生理作用などについて研究する学問であり、心理学は人間の心を科学的に研究する学問です。

脳と心には深い関係があり、脳科学と心理学は双方に通ずるところがありますが「研究対象」と「アプローチ方法」には違いがあります。

ただし、心理学・脳科学はともに人間の思考・行動・認知・感情を理解するための学問である、という点は共通点として覚えておきましょう。

どちらも医学分野だけでなく、機械工学やマーケティングなどのあらゆる分野での活用が期待されています。ビジネスシーンにおいても欠かせないものとなってきているため、この機会に心理学・脳科学について理解を深めてみてはいかがでしょうか。

お問い合わせはこちら

 

  • share
  • share
  • share