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認知機能は加齢にともなって低下していくものです。認知症に至るまで発展すると、認知症の種類によっては現代の医療をもってしても根治が難しいものもあります。年齢を重ねても自分らしく生きられるために、今から認知機能について知識を深めることが大切です。
この記事では、認知機能の概要から低下することでみられる症状の例、認知機能の低下を防ぐ方法を解説します。
認知機能とは
はじめに、認知機能に関する基本的な知識から見ていきましょう。
人間の五感に準ずる能力のこと
認知機能とは、見る・聴く・触る・嗅ぐ・味わうの5つの感覚(五感)から得た情報をもとに、周りの状況を理解して行動する能力です。言葉を操る、計算をする、自身の状況を確認する、といったような人間の知的機能を総称した概念ともいえるでしょう。
普段意識することはあまりありませんが、私たちは日々の生活を送るうえで認知機能をフルに活用して生活しています。一方で、近年では「認知機能」は認知症などの障害の程度を表す場合に用いられることが多い傾向です。
年齢とともに低下する
認知機能は一般的には年齢とともに低下していくといわれており、低下が続くといわゆる「認知症」と呼ばれる症状になります。
認知症は認知機能が低下し続けた結果、日常生活に支障をきたす状態です。
認知症のなかでも最も割合が多いものが「アルツハイマー型認知症」であり、現代の医療では根本的な治療は難しいとされています。
また、アルツハイマー型認知症は高齢者のみが発症するとは限りません。40代・50代で発症することもあれば、10代で発症した事例も報告されています。
このように65歳未満の人が発症しやすいアルツハイマー型認知症は「若年性アルツハイマー」と呼ばれます。
認知機能の低下でみられる症状
前述のとおり、認知機能は年齢とともに低下するといわれていますが、認知機能低下によって実際にどのような症状が表れるのでしょうか。
記憶障害
自身の記憶に障害をきたす記憶障害は、一般的な物忘れとは別物です。記憶障害は自身の人生にかかわる重要なことであっても、その記憶が最初からなかったように思い出すことができません。
物忘れの場合は、例えば「やらなければならないことを忘れてしまっていた」「買い物に来たけど買うものが思い出せない」というように自覚があります。
しかし、記憶障害の場合は忘れているという自覚がありません。
失語(運動性失語・感覚性失語など)
読み書き・話す・理解する・繰り返すということが困難になる障害です。
失語には大きく「運動性失語(ブローカ失語)」と「感覚性失語(ウェルニッケ失語)」の2種類が存在します。
運動性失語は脳のブローカ野の損傷によって、言葉の意味は理解できるものの、言葉にすることができなくなる障害です。
対して、感覚性失語は脳のウェルニッケ野の損傷によって、話された言語・書かれた言語の理解が困難になります。
失行(観念運動失行・観念失行など)
失行は順序などを覚える必要がある作業が行えなくなる障害です。
例えば、手を動かしたり指を動かしたりする動作は機能的に問題ないものの、服のボタンをとめる・道具を使って作業をする、といったような順序やパターンを覚える必要がある作業が行えません。
失行にはさまざまな症候が見られますが、代表的な例としては観念運動失行(パントマイムの失行)や観念失行(道具使用の失行)などが挙げられます。
失認(聴覚失認・視覚失認など)
失認は、認識自体はできるものの、物体を識別することが困難になる障害です。五感すべてで失認が発症する可能性があり、一般的には一つの感覚能力が失われます。
例えば、聴覚失認であれば電話の呼出音は聞こえていてもそれが電話だとわからない、視覚失認であればハサミが見えているが、それがどのような道具なのかわからない、といったような症状が現れます。
遂行機能障害
遂行機能障害(実行機能障害)は、目標を定めて計画どおりに実行することができなくなる障害です。
具体的には、自発的に行動できず指示がないと何もできなくなる、複数の作業ができなくなる、行動が開始できない、衝動的な行動をとるなどの症状が現れます。
遂行機能障害の場合は、症状が現れてもサポートがあれば自身で行動できる可能性があります。
認知機能の低下を防ぐ方法
日々の生活を改めることや、トレーニングを行うことで認知機能の低下はある程度防げます。具体的な方法としては、次のようなものが挙げられます。
生活習慣の改善
アルツハイマー型認知症は、糖尿病や脳血管障害、脂質異常症などの生活習慣の乱れから発症する病気に起因することが多くあります。
そのため、バランスの摂れた食生活を心がけ、飲酒や喫煙にも気を付けることが重要です。また、2011年のアメリカの研究では、社会的なつながりのある人は認知症の発症リスクが70%も減少するという報告があります。
人と積極的にかかわり、社会のなかで役割や生きがいを持つことも認知機能の低下を防ぐ手段の一つです。
定期的な運動
脳は運動によって刺激されて認知機能が向上します。具体的には、週2~3回以上・30分以上の運動が良いとされ、主に歩くことがおすすめです。
近年では運動と他のトレーニングを組み合わせるとより効果的とされ、運動と頭の体操を組み合わせたトレーニングなども普及しています。
脳トレなどの認知機能トレーニング
脳トレといっても難しいものではなく、パズルやクロスワード・虫食い算などの簡単なもので問題ありません。自身が興味を持って継続できるものを選びましょう。
脳も筋肉と同じように使わなければ機能が低下してしまいます。脳トレはとにかく考えることを継続することが重要です。
株式会社NeUでは、認知機能トレーニングのサービスとして「Active Brain CLUB」を提供しています。認知機能の維持・向上を目的としたものであり、自身の脳活動を瞬時に可視化して、脳活動を見ながらトレーニングを行える点が特徴です。
まとめ
認知機能は人間の五感から得た情報をもとに、状況を理解して行動する能力です。認知機能は年齢とともに低下するといわれており、日常生活に支障をきたすほど低下すると「認知症」と呼ばれる症状になります。
認知機能が低下することで、記憶障害・失語・失行・失認・遂行機能障害などが現れる可能性があるため、認知機能の低下を防ぐための対応を行いましょう。
具体的には、生活習慣の改善・定期的な運動・脳トレの実施などが挙げられるため、この機会に対策を講じてみてはいかがでしょうか。