キリンホールディングス株式会社の食品成分の臨床試験に協力し、弊社脳活動計測装置による脳血流改善効果の“見える化”に成功しました

2021.06.24
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脳の健康維持に貢献する乳由来成分「βラクトリン」の「脳血流」改善効果を解明

キリンホールディングス株式会社(本社:東京都中野区、代表取締役社長:磯崎功典、以下キリンホールディングス)のキリン中央研究所(所長 吉田有人)は、乳由来の成分「βラクトペプチド※1の1つであるGTWYペプチド※2」(以下、βラクトリン)が、加齢に伴い低下する前頭前野の脳血流を改善することを臨床試験で確認したことを、2021年6月23日に発表しました。
本臨床試験は、株式会社NeU(本社:東京都千代田区、代表取締役:長谷川清、以下、NeU)取締役CTO川島隆太博士監修のもと、実施されたものとなります。
また、NeUが開発した小型ウェアラブル脳血流測定器HOT-2000※3を用いて、脳血流の改善効果を“見える化”(可視化)する事にも初めて成功しました。

※1乳タンパク質に由来し、トリプトファン‐チロシン(WY)のアミノ酸配列を含み認知機能改善作用を有するペプチドの総称。
※2 βラクトペプチドの主要な1成分で、グリシン‐トレオニン‐トリプトファン‐チロシン(GTWY)という4アミノ酸配列のテトラペプチド。
※3 2チャンネル(2CH)のfNIRS(光トポグラフィー)で、ウェアラブル携帯型の脳活動計測装置。脳血流を手軽に計測することを重視した、軽量でつけ心地のよい脳血流測定器。スマートフォンやタブレットでのリアルタイム・ワイヤレス計測が可能。fNIRS(光トポグラフィー技術)とは、微弱な近赤外光を用いて大脳皮質部分を計測し画像化(見える化)する技術。身体への負担が少なく、脳波計測や磁気共鳴等の他の脳計測技術に比べると、より日常に近い環境で脳の計測が可能な点が最大の特徴。

本研究成果は、2021年6月24日(木)から26日(土)までの間に開催される「第10回日本認知症予防学会学術集会」にて発表されます。

1. 発表演題名 「乳由来βラクトリンの摂取は背外側前頭前野における脳血流を増大する」
2. 学会名    「第10回日本認知症予防学会学術集会」
3. 発表日    2021年6月24日(木)~26日(土)
4. 発表者    キリンホールディングス株式会社 R&D本部 キリン中央研究所 阿野泰久、小林啓子
株式会社NeU 川島隆太

詳しくは、キリンホールディングス株式会社のニュースリリースをご覧ください。
https://www.kirinholdings.co.jp/news/2021/0623_01.pdf

NeU取締役CTO 川島隆太博士コメント

「脳の血流を改善することは、認知機能を維持していく上で非常に重要な要素の一つです。
今回の臨床試験により、βラクトリンが脳血流を改善し、記憶力や集中力を高めるメカニズムの一端が明らかになりました。超高齢化社会の中で、認知機能維持のために食習慣の果たす役割は、今後ますます大きくなっていくと考えられます。
また、NeUのウェアラブルな脳血流測定器により、簡便にその脳血流改善効果が可視化できたことは大きな喜びです。本取組がより加速し、脳の健康サポートがより身近な社会となることを期待しています」


川島隆太博士
株式会社NeU取締役CTO兼 東北大学加齢医学研究所 教授/東北大学スマート・エイジング学際重点研究センター センター長

本研究の概要 (実施:キリン中央研究所 監修:川島隆太博士)

今回、50名の健常中高年を対象に、ランダム化二重盲検比較試験※4を実施し、βラクトリンを含むサプリメントの摂取が脳血流に及ぼす作用を臨床試験で検証しました。負荷課題中の脳血流量を34チャンネル(34CH)の脳血流測定器(WOT-HS)を用いて測定した結果、βラクトリン摂取群では、認知機能課題実施中の背外側前頭前野における脳血流の変化量が、プラセボと比較して有意に増大しました。本結果により、βラクトリンが記憶力や集中力を高めるメカニズムの一端が解明されました。
上記とは別に、114名の健常中高年を対象に、βラクトリンを含むサプリメントを摂取する臨床試験を行いました。この臨床試験では、2CHのウェアラブル測定器(HOT-2000)による測定で、プラセボ比較で認知機能課題実施中の脳血流が有意に増大することを確認しました。なお、この臨床試験では、当該仕様のウェアラブル測定器を用いた脳血流改善効果の検出に初めて成功しました。

※4 参加者を無作為に偽薬と実薬の群に分け、試験完了までいずれの群かわからない、治験で用いられる試験方法。

<試験方法>

1)健常中高齢男女50名を対象に、βラクトリンを摂取する群とプラセボ摂取群を無作為に割り付けた二重盲検化試験を行いました。摂取0週目および6週目に認知機能課題実施中の脳血流量を34CHの光トポグラフィーを用いて測定しました。

2)健常中高齢男女114名を対象に、βラクトリンを摂取する群とプラセボ摂取群を無作為に割り付けた二重盲検化試験を行いました。摂取6週目に認知機能課題実施中の脳血流量を2CHの光トポグラフィーを用いて測定しました。

<試験結果>

1)34CHの光トポグラフィーを用いた試験では、βラクトリン摂取群では、摂取6週目のワーキングメモリー課題中の背外側前頭前野の脳血流量が摂取0週目からの変化で、プラセボ群と比較して統計学的に有意に高まることを確認しました(図1)。

2)2CHの光トポグラフィーを用いた試験でも、βラクトリンの6週間の摂取により、背外側前頭前野の脳血流量がプラセボ群と比較して有意に高いことを確認しました(図2)。
これら2つの臨床試験の結果は、国際誌の「Aging (Albany NY)」※5および「Journal of Clinical Medicine」※6に掲載されました。

※5 Ano Y, et al., β-lactolin increases cerebral blood flow in dorsolateral prefrontal cortex in healthy adults: a randomized controlled trial, Aging (Albany NY). 2020 Sep 29;12(18):18660-18675.
※6 Ano Y, er al., Effects of β-Lactolin on Regional Cerebral Blood Flow within the Dorsolateral Prefrontal Cortex during Working Memory Task in Healthy Adults: A Randomized Controlled Trial, J Clin Med. 2021 Jan 28;10(3):480.

 

図1 34CH fNIRS(光トポグラフィー)を用いた脳血流測定の結果

介入前後の空間認知機能課題中の脳血流の測定結果。βラクトリン摂取群ではプラセボ群と比較して有意に背外側前頭前野領域の脳血流変化が増大(q = 0.045)。Bars are mean ± S.E. (プラセボ群; N=25, βラクトリン群; N=24)

 

図2 2CH fNIRS(光トポグラフィー)を用いた脳血流測定の結果

介入後の2-back課題中の脳血流の測定結果。βラクトリン摂取群ではプラセボ群と比較して有意に背外側前頭前野領域の脳血流変化が増大(p = 0.027)。(プラセボ群; N=45, βラクトリン群; N=47)

脳血流測定器について

上記試験で使用された脳血流測定器WOT-HSおよびHOT-2000は、いずれもNeUが開発・販売を行っております。

ウェアラブル光トポグラフィ「WOT-HS」

https://neu-brains.co.jp/solution/nirs/wot-hs/

携帯型脳活動計測装置「HOT-2000」

https://neu-brains.co.jp/solution/nirs/hot-2000/

 

今後もNeUは、培ってきた脳の見える化技術を活用し、世の中に役立てるための活動を続けてまいります。

■本件に関するお問い合わせ

株式会社NeU 担当:岡田
E-mail info@neu-brains.com

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