【森永製菓株式会社との共同研究】パッケージの開封から食べ終えるまでの喫食体験を評価　チョコレートの商品価値を生体・主観調査で評価

株式会社NeU（東京都千代田区神田司町、代表取締役社長：長谷川 清、以下「NeU」）と、森永製菓株式会社（東京都港区芝浦、代表取締役社長・太田 栄二郎、以下「森永製菓」）は、チョコレートの喫食体験がもたらす情緒的価値と商品価値に関する共同研究を行い、チョコレートの喫食体験は、菓子自体の品質だけでなく、パッケージの形態・デザインなどからも、商品価値を好意的に感じられている可能性が示唆されました。
また、本研究成果は2024年9月12～14日に開催された第26回日本感性工学会大会にて森永製菓により発表されました。

研究背景と目的

食品がヒトにもたらす価値は複合的です。風味や食感などのおいしさに加え、パッケージや見栄え、簡便性など、さまざまな要素が含まれています[1]。これまで、「品質」がヒトに与える情緒的な影響に着目した研究は多く行われてきましたが、パッケージのデザインや包装形態、開封作業を含めた喫食にまつわる一連の体験について、その情緒的な影響を調べた研究はあまり多くありません。そこで、今回の研究では、森永製菓製チョコレート製品を含む市販品のチョコレートを対象に、パッケージの開封から喫食終了までの動作を「喫食体験」と定義し、その喫食体験の価値を定量化することを試みました。

研究手法

■被験者
２０歳代から５０歳代までの健常な成人１５名
※森永製菓に勤務しており、チョコレートの開発業務に関わっていない者

■評価サンプル
包装形態の異なる市販のチョコレート３品を対象とし、ハイカカオ製品かつ具材が入っていない無垢タイプのチョコレートに統一しました。

表１:評価サンプル

■評価指標(WTPについて)
製品の体験価値評価には、一粒のチョコレートを喫食した体験に対して「最大いくら支払えるか」という支払意思額（WTP, Willingness to Pay）を、評価サンプルを比較する指標としました。

■実験の流れ
被験者には脳血流・心電の計測機器を装着し、３種類のサンプルを配布し、パッケージを開封してから一粒喫食終了するまでの一連の喫食体験をしてもらいました。喫食終了後には、WTPの評価および入力、主観評価を行いました。サンプルの提示順はランダムとし、１日に全サンプルを評価してもらいました。
生体情報は、一連の喫食体験中に継続的に取得しており、データ解析には、喫食体験前の安静時・喫食時・WTP評価値の検討時、それぞれの測定値を用いました。

■使用機器
・脳血流量計測：HOT-2000(株式会社NeU製)
・心電計測：biosignalsplux(株式会社クレアクト製)

研究成果について

主観評価およびWTP評価値の結果から、森永製菓製チョコレート製品Aは市販品B・Cと比較して「おいしさ」「本格感」「高級感」や「ちょっと贅沢な気分」を有意に感じられていることが分かりました。また、森永製菓製チョコレート製品AのWTP評価値の検討中には、好ましいブランドを選択する際に活動が高まることが報告されている背内側前頭前野の脳血流[4][5]が有意に上昇していました。これらの結果から、生体・主観評価により開封から喫食終了までの一連の体験で得られる「本格感」や「高級感」といった情緒的価値やヒトが感じる商品価値の評価を定量化できる可能性が示唆されました。

NeUは今後も、脳科学の知見を活用し、製品開発やマーケティングに新たな視点を提供していきたいと考えています。

参考文献

[1] 村上智明：私たちはどのような価値を感じて食品を購入しているのか？―フードバリューによる消費者行動の研究動向―, 農林水産政策研究所レビュー No.113,2023.
[2] 真川竜太，一楽建二，中村勇介，吉原 毅，阪井直哉，山本 宗，山崎英恵:ブローボトル形態冷菓の摂取が自律神経活動および精神疲労に与える影響, 日本食品科学工学会誌, 67(9),2020.
[3]山崎英恵, 森滝 望, 井上 和生:出汁がヒトの自律神経活動及び精神疲労に及ぼす影響, 日本栄養・食糧学会誌,71,133-139,2018.
[4]Jose Paulo Santos, et al.: Investigating the role of the ventromedial prefrontal cortex in the assessment of brandsm, Front. Neurosci., 2011.
[5]Michael Deppe,et al.,：Nonlinear Responses Within　the Medial Prefrontal Cortex Reveal When Specific Implicit Information Influences Economic Decision Making, J Neuroimaging 2005;15:171-182.

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