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【森永製菓株式会社との共同研究】アイトラッキング技術とfNIRSを用いたパッケージのデザインの評価

【森永製菓株式会社との共同研究】アイトラッキング技術とfNIRSを用いたパッケージのデザインの評価

株式会社NeU(東京都千代田区神田司町、代表取締役社長:禰寝 義人、以下「NeU」)と、森永製菓株式会社(東京都港区芝浦、代表取締役社長・太田 栄二郎、以下「森永製菓」)は、パッケージデザイン変更の購買行動への影響について共同研究し、高コントラストの文字・デザインが視線を製品特徴に誘導し、興味・記憶の向上に効果的であることを示唆しました。
また、本研究成果は2025年3月5日(水)~7日(金)に開催された第20回日本感性工学会春季大会にて森永製菓により発表されました。

研究背景と目的

食品の価値は、風味や食感といったおいしさだけでなく、パッケージや見た目、利便性など、さまざまな要素が組み合わさって形成されています。[1]特にパッケージデザインは、店頭でわずか数十秒の間に消費者の注意を引き、製品の情報や価値を伝達する重要な手段となります。[2-3]また、リニューアルされた新製品が消費者に受け入れられるかどうかにも、パッケージデザインが大きく影響すると考えられています。[4]
本研究では、ロングセラー製品のパッケージデザイン変更が、消費者の製品購買及び製品への印象に及ぼす影響を明らかにすることを目的とし、脳血流や視線の計測を用いてその効果を定量的に評価しました。

研究手法

■被験者
20代から60代の週1回以上冷凍菓子を喫食する健常な成人 24名
※評価対象となる冷凍菓子の喫食経験がある者

■評価サンプル
森永製菓製冷凍菓子の通年デザイン4種類+期間限定デザイン2種類の計6種

■実験の流れ
本実験では、パッケージデザインの見え方や購買意欲への影響を評価するために、脳活動と視線の計測を行います。まず、被験者の方には、モニタ上でさまざまな商品パッケージ画像を視聴していただきます。その際、脳活動計測と視線計測を実施します。新パッケージと季節パッケージを混ぜて提示し、提示順はランダムに変更します。
実験では、アイスコーナーの風景やアイスのパッケージ、コンビニエンスストアの商品画像などが繰り返し表示されます。画像視聴後には、主観的な評価を把握するためのアンケート調査も実施します。これらのデータを基に、パッケージデザインの効果を分析し、消費者の視線や印象への影響を明らかにします。

■使用機器
・脳血流量計測:HOT-2000(株式会社NeU製)
・視線計測装置:pupilyzer (夏目綜合研究所製)

研究成果について

■合計注視時間のヒートマップ
コントラストの強い文字部分に視線が誘導されました。

■パッケージ画像視認時の瞳孔径測定
通年デザインでは、 Aのベースデザインと比較してCの擬音を強調したデザインで瞳孔径が相対的に大きく、期間限定デザインでは、Fのチョコレート増量デザインで瞳孔径が大きい傾向がみられました(有意傾向)。

■各パッケージ画像の印象評価
通年デザインでは全ての質問においてD(25年春発売)の評価が高く、
期間限定デザインではEの年末仕様デザイン驚き・おもしろさなどの情緒価値の評価が高く、
Fのチョコレート増量デザインおいしそうさ・買いたいなど購買喚起の評価が高く見られました。

■パッケージ画像視認中の脳血流量変化
通年デザインでは、いずれも種類間で有意差はないが、左側背外側前頭前野の脳血流Bの新製法をアピールしたデザインで、背内側前頭前野の脳血流B・D(新製法・25年春発売)で相対的に上昇しました。

期間限定デザインでは、F(チョコレート増量デザイン)のパッケージにおいて背内側前頭前野の脳血流が有意に高い結果となりました。

考察

コントラストの高い文字やデザインを用いることで、消費者の視線を製品特徴の訴求部分に誘導でき、効果的な製品特徴の伝達や製品に対する興味、記憶へのアプローチが可能であることが示唆されました。
加えて、文字の『意味性』も重要です。デザインCに記載の英語表記は、本研究の被験者が日本語を母国語とする日本人であったため、瞬時に意味を理解できず、注視時間が短かった可能性があります。一方で、デザインFのチョコレート増量表記は理解しやすい分注視時間も長く、主観評価の結果からは購買喚起への効果がうかがえました。また、脳血流の結果からも有意に興味・関心を高めたことが示されており、視線誘導だけでなく、誘導先の文字の意味の分かりやすさも重要であることが示唆されました。

NeUは今後も、脳科学の知見を活用し、製品開発やマーケティングに新たな視点を提供していきたいと考えています。

参考文献

[2]Garber, Lawrence L. Jr.,: The Package Appearance in Choice,”in Frank R,Kardes and Mita Sujan(eds,) Advences in Consumer Research, 22, Association for Consumer Research, Provo, UT; 653-660,1995.
[3]竹内淑恵:製品パッケージの情報処理とコミュニケーション戦略, 『日経広告研究所報』第234号,2007.
[4]神吉弘邦,笹田克彦,高橋美礼,廣川淳哉: ロングセラー商品のデザインはココが違う!―あの商品は、なぜ売れ続けるのか?―,日本BP社,日経デザイン,2013.
[5] Blumenfeld, R. S., & Ranganath, C. (2006). Dorsolateral prefrontal cortex promotes long-term memory formation through its role in working memory organization. Journal of Neuroscience, 26(3), 916–925.
[6]Murray, L. J., & Ranganath, C. (2007). The dorsolateral prefrontal cortex contributes to successful relational memory encoding. Journal of Neuroscience, 27(20), 5515–5522.
[7] Glimcher, P. W. (2014). Value-based decision making. In P. W. Glimcher & E. Fehr (Eds.), Neuroeconomics: Decision making and the brain (2nd ed., pp. 373–391). Academic Press.
[8]Levy, D. J., & Glimcher, P. W. (2012). The root of all value: A neural common currency for choice. Current Opinion in Neurobiology, 22(6), 1027–1038.
[9]Rushworth, M. F. S., Noonan, M. P., Boorman, E. D., Walton, M. E., & Behrens, T. E. (2011). Frontal cortex and reward-guided learning and decision-making. Neuron, 70(6), 1054–1069.
[10]Burgess, P. W., Dumontheil, I., & Gilbert, S. J. (2007). The gateway hypothesis of rostral prefrontal cortex (area 10) function. Trends in Cognitive Sciences, 11(7), 290–298.

* 本ニュースリリースに記載された内容は発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。

 本件に関するお問い合わせ

株式会社NeU ニューロマーケティングビジネスユニット
E-mail info@neu-brains.com

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ニューロマーケティングチーム 広報担当

営業職、カスタマーサクセス職を経て、2024年に株式会社NeUに入社。マーケティング担当・広報担当としてホームページの運営に従事。ニューロマーケティングというあまり親しみのないテーマをより分かりやすく伝えたい、という想いで広報活動を行っています。

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