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広告によるイメージ訴求、魅力的なパッケージデザイン、目に留まる陳列方法、回遊しやすいウェブサイト設計などマーケティング戦略は多岐に渡っていますが、いずれも目的は「購買行動を促進すること」です。ただし、同じ訴求をしても、必ずしもすべてのユーザーが反応するとは限りません。その背景には、個人の購買行動傾向が影響しているのではないでしょうか。
この記事では、購買行動の基本的な考え方や行動経済学で示された心理的効果を整理したうえで、購買行動を左右する要因の一つである「FoMO(取り残される不安)」について弊社の調査結果とあわせて解説いたします。
『購買行動』を左右する心理的スタイル
消費者の購買行動には、「マキシマイザー」と「サティスファイサー」という2つの心理的スタイルが存在します。これは、どのように選択肢を比較し、意思決定を行うかという傾向を示すものです。それぞれの特性が、情報収集の仕方・選択プロセス・購入後の満足度 に大きく影響します。 以下にそれぞれの特性をご説明します。
マキシマイザー
何かを購入する際や決断する際に、最も良いものを求める人を指します。事前に情報を収集し、判断の際には比較検討を行うため時間を要します。購入後も引き続き情報を収集して比較検討をする場合もあり、「こっちのほうがよかったかも…」と後悔をすることもあります。
サティスファイサー
何かを購入する際や決断する際に、限定された時間や制約の中で自身が最低限満足できるものを求める人を指します。最低限の満足を求めているため、検討にはあまり時間はかからず、購入後に後悔することも少ないという特徴があります。
マキシマイザーとサティスファイサーで判断基準や行動が異なることから、ユーザーがどちらに属するかによって、マーケティング上の響くポイントも変わります。マキシマイザーにとっては、商品サイトやSNSでの情報の充実性や口コミが重要であり、サティスファイサーにとっては、パッケージの印象や目に留まる陳列、オンライン購入のスムーズさなどが重要なのかもしれません。
行動経済学で示された購買行動

一般的に広く知られている購買行動には、行動経済学で示されている以下のような心理的効果が影響していることが知られています。
バンドワゴン効果
すでに多くの人が支持するものに対して、より多くの支持が集まる現象を指します。例えば行列ができている飲食店にさらに多くの人が並んでしまうような、多くの人に消費されているものに引き寄せられる状況のことです。
スノッブ効果
希少性が高く、入手することが難しいものに対して需要が高まる現象を指します。「他人と同じは嫌」「独自性のあるものが欲しい」という心理が働くことで購買意欲が促進されます。バンドワゴン効果とは対称的な購買行動であり、どちらの行動を取るかは性格特性も影響していると言われています。
ヴェブレン効果
一般的な需要の法則とは異なり、商品の価格が高いほど、消費者の需要が高まる現象を指します。典型的な例としては、ハイブランド商品や高級外車などが挙げられ、顕示的消費とも言われています。
アンダードッグ効果
バンドワゴン効果と対をなす現象で、大多数の人が支持しているもの以外の不利な状況にある選択肢を支持したくなる認知バイアスを指します。「判官贔屓(ほうがんびいき)効果」などとも呼ばれます。
プロスペクト理論
利益を得るか損害となるか分からない不確実な状況下において、リスクを伴う意思決定を行うことがあるという行動経済学の理論です。「今買わないと損をする」という損失回避が影響し、認知に歪みが生じることが要因と考えられています。
商品やサービスの訴求時には、上記の心理的効果を狙った訴求文言が広告コピーや店頭でのPOP、更には店舗での応対場面でも活用されています。どの効果が強く働くかは、個人の性格特性や購買行動傾向によって異なるため、網羅的に訴求するためにはあらゆるアプローチを並行することが必要だと考えられます。
購買行動が変化する現代の背景
近年の購買行動は、店舗での比較検討から、SNSや口コミ、ランキングサイトなど「他者の評価」を基準にした意思決定へと変化しています。
「みんなが買っている」「限定商品を逃したくない」といった心理が強まり、行動経済学で説明されるような“非合理的な選択”が日常的に起きています。
こうした現代的な購買心理を象徴するキーワードが、「FoMO(取り残される不安)」です。
購買行動に関連する『FoMO』とは?

FoMO(フォーモ)とは、Fear of Missing Outの略称であり、「他者が自分のいないところで良い経験をしているのではないか」「世の中から取り残されているのではないか」と焦り、不安になることを指します。
先行研究では、FoMO傾向と衝動買い傾向やSNS依存との関連が示されていることから、弊社でもFoMO傾向と購買行動の関係を明らかにするため、独自調査を実施しました。
調査概要
参加者
58名(年齢19 ~75歳)の方に参加していただきました。
方法
FoMO尺度、マキシマイゼーション尺度、衝動買い尺度を用いたWebアンケート調査を実施しました。 FoMOとマキシマイゼーション(後悔・決定困難・追求)、および衝動買い傾向との相関を分析しました。
結果
結果は以下の通りで、FoMO傾向と衝動買い傾向、FoMO傾向とマキシマイザー傾向に相関が見られました。
・FoMO✕衝動買い:中程度の相関(r=0.52)
・FoMO✕マキシマイゼーション(後悔):中程度の相関(r=0.48)
・FoMO✕マキシマイゼーション(決定困難):中程度の相関(r=0.47)
・FoMO✕マキシマイゼーション(追求):弱い相関(r=0.25)
(上位3項目は統計的に有意差あり)

考察
今回の結果から、FoMO傾向の高さが購買行動に影響を与えている可能性が示されました。つまり、FoMOが強い人ほど「逃したくない」「損をしたくない」という感情に駆られ、衝動買いをしやすい傾向がある一方で、同時に「もっといいものを選びたい」というマキシマイザー的思考にも繋がると考えられます。
マーケティングにおいては、SNS広告やキャンペーン設計の際、「限定性」「リアルタイム性」「他者比較」などの要素は、購買意欲を高める一方で、FoMOを刺激しすぎるリスクもあります。企業としては、消費者が安心して選べる“心理的安全性のある購買体験”が、長期的なブランド信頼を育む鍵となるでしょう。
まとめ
購買行動には、最も良いものを求める「マキシマイザー」と、自身が最低限満足できるものを求める「サティスファイサー」に大別することができました。
行動経済学では購買行動に関連する心理的効果が唱えられていますが、どの効果が生じやすいかは個人の性格特性や購買行動が影響している可能性があります。
さらに弊社の調査では、世の中から取り残されているのではないかと不安に思う「FoMO」が高い場合、購買行動傾向に関わらず衝動買いをしやすい可能性が示唆されましたが、今回の結果は「購買行動を左右する心理的要因」を理解する第一歩にすぎません。
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