トップブログコラム“周囲に注意を向ける力”を測る:Visual Search課題と脳機能研究

“周囲に注意を向ける力”を測る:Visual Search課題と脳機能研究

“周囲に注意を向ける力”を測る:Visual Search課題と脳機能研究

本記事の概要:

 • 安全な運転や作業などを行うため、視覚的注意力が重要です。

 • 視覚探索(Visual Search)課題では、視覚的注意力を定量的に計測することができます。

 • 視覚的注意力には、脳の前頭葉や後頭葉の素早い活動が関わります。

 • 誤った反応を抑えるには、脳の前頭葉が関わります。

 • 視覚的注意力を計測できる課題を弊社で作成いたします。

 

1. 視覚的注意力とは?

例えば、
・自動車の運転
・人混みでの歩行
・不整地の歩行

など、私たちは普段の生活の中で事故が起こらないよう常に周りを注意しながら動いています。
危険を回避する上で、様々な情報を利用しているわけですが、とりわけ目から入る情報は重要です。さらに、目の前に現れる膨大な量の情報から、安全に移動するために不必要な情報は無視して、重要な情報に特に注意を向けることで、事故のリスクを下げることができます。このように、視覚情報から周りの環境変化に素早く気づき、情報を取捨選択するために重要な能力が「視覚的注意力」です。

そのため、視覚的注意力が衰えると、とっさの危険に対処しにくくなってしまうのです。

この視覚的注意力を計測し数値化する試みが多くの研究者や専門家によって報告されています。その中でも代表的な方法である視覚探索(visual search)課題についてご紹介します。
 

2. 視覚探索課題とは?

視覚的注意力を測る認知課題

視覚探索課題は、多数のダミー視覚刺激や妨害を目的とする視覚刺激の中から、目標となる対象(ターゲット)を探し出す課題です。正しいターゲットをなるべく早く探し出せれば視覚的注意力が高いと言えます。

― 課題内容:色ポップアウト探索

複数の図形が表示された画面を非常に短い時間(例えば、50ミリ秒)だけ提示します。表示された図形の中からあらかじめ指定されたターゲット刺激(緑色の楕円)を素早く見つけ、その楕円が横向き(水平)か縦向き(垂直)かを、PCのボタンを使って答えます(例えば、水平だったら「右ボタン」、垂直だったら「左ボタン」を押下する)。
なお、画面上には赤色で表示された楕円も表示されます(「妨害刺激」と呼ばれる)。被験者は目立つ赤色の妨害刺激ではなく、ターゲットである緑色の楕円に注意を当てる必要があります。
この課題の正答率や反応時間を指標として用いることで、視覚的注意力を定量化することが可能となるのです。
また、画面に刺激を提示する時間を調整することで難易度の調整も可能です。
Visual Search tasks

弊社では、その中でも画面上に表示される刺激が最も多く、難易度調整も可能な van den Bergら(2016)の方法を採用しております。

 

3. 視覚的注意力と脳の関係

― 視覚探索中に脳はどう活動するのか?

視覚的注意力にはどのような脳活動が関連するのでしょうか。
ここでは、fMRI(機能的MRI)EEG(頭皮脳波計)を用いた代表的な研究をいくつか紹介します。

▶ 前頭葉・後頭葉の活動が関係する:van den Berg et al. (2016)

先ほど示した色ポップアウト視覚探索課題を使ったvan den Bergら(2016)の研究では、脳波計を用いて視覚探索と脳機能の関係を調べました。
その結果、探索の反応時間(楕円の向きを回答する速さ)が速いほど、前頭葉後頭葉で素早く、大きな活動が生じていることが観察されました。また、一定期間の訓練を積むことでこの脳活動が弱まることもこの研究で明らかになっています。

前頭葉 後頭葉

▶ 前頭葉の活動が誤反応を抑制する:Lavie & de Fockert (2006)

Lavie & de FockertはfMRIを用いて、ターゲットとは無関係だが間違いを誘うような「妨害刺激」を挿入し、妨害刺激を無視してターゲットに注意を向ける際の脳活動を調査しました。
その結果、妨害刺激の存在は左右上頭頂葉と左前頭葉の活動を高めること、さらに左前頭葉の脳活動が高いほど、妨害刺激の影響を受けにくいことがわかりました。

つまり、「妨害刺激」を無視してターゲットに注意を向けるために前頭葉の脳活動が大切であることを示唆しています。
 

4. 最後に

本記事では視覚的注意力について、定義と計測方法、脳活動との関係をまとめました。
弊社では、本記事内でご紹介した視覚探索課題を用いた実験やその他ご要望に合わせて様々な認知課題のカスタマイズも承っております。
計測に興味はあるが実装が難しい…などお困りの場合はこちらまでお問い合わせください。

参考文献

• van den Berg, B., Appelbaum, L. G., Clark, K., Lorist, M. M., & Woldorff, M. G. (2016).
Visual search performance is predicted by both prestimulus and poststimulus electrical brain activity. Scientific Reports, 6, 37718.
https://doi.org/10.1038/srep37718
• Lavie, N., & de Fockert, J. (2006).
Frontal control of attentional capture in visual search. Visual Cognition, 14(4–8), 863–876.
https://doi.org/10.1080/13506280500195953

NeUではvisual search課題をはじめ、さまざまな認知課題の作成代行・作成補助を行っております。ご興味のある方は、詳細はこちらをご確認ください。

 
認知課題 cognitive tasks

■本件に関するお問い合わせ

株式会社NeUニューロマーケティングチーム
E-mail info@neu-brains.com

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熊井 健/データサイエンティスト

運動と脳機能についての研究経験からNeUに入社し、現在はニューロマーケティング部門でデータサイエンスに従事。 脳機能研究を行っていた経験を活かし、生体情報データの処理、応用的な解析を行っています。 依頼者の方々の疑問に対し、解決に近づけるような知見を提供できるようにとの思いで取り組んでおります。 東京都立大学人間健康科学研究科にて理学療法学博士を取得。専門領域は脳機能とリハビリテーション。

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