トップブログコラムマーケティングにも活用される脳科学とは?今後どのような将来性があるのか

マーケティングにも活用される脳科学とは?今後どのような将来性があるのか

さまざまな技術分野・研究分野を組み合わせ、より高い効果を得ようとする取り組みが近年では活発に見られます。

一見すると関係がなさそうな分野同士であっても、実際には深く関係していることは珍しくありません。その一例として、今回は脳科学とマーケティングの組み合わせについて見ていきましょう。

この記事では、脳科学の概要からマーケティングとの組み合わせが効果的である理由、併せて覚えておきたい「ニューロマーケティング」について解説します。

脳科学とは


脳科学とは、脳の構造や生理作用などにフォーカスした学問です。人の行動や情動などに関連する脳機能を研究することを指します。そのため、生物学から医科学、心理学まで幅広い領域を内包している学際的な分野です。

脳は一つですが、脳部位に応じて役割は細かく分けられています。
例えば、頭の前方に位置する前頭葉は、人間らしさを司る部位と言われており、論理的・抽象的思考、感情の制御なども行なう部位です。また、頭の左右側面にある側頭葉であれば記憶を補完する、頭の後ろ側の下部にある小脳であれば運動制御や平衡感覚を司るなど、さまざまな役割があります。

人は脳の司令によって思考・行動をするため、これらの仕組みを紐解くことであらゆる分野への活用が期待できます。医学・遺伝学・心理学だけでなく、電子工学やマーケティングなど、さまざまな分野への活用・応用が期待されている学問です。

脳科学が私たちの生活に与える影響


脳科学の発展は私たちの生活に多様な影響をもたらします。そのなかでも、代表的な3つの影響について解説しますので、一つずつ見ていきましょう。

病気の診断と治療の改善

脳の仕組みがわかれば、さまざまな病気や障害に対する診断と治療が可能になります。例えば、脳卒中・アルツハイマー病・パーキンソン病などの脳疾患は、脳科学の発展によって新しい診断・治療方法が開発されています。

また、統合失調症などの精神疾患も、実際には脳が正常に機能できなくなったことで引き起こされるものであり、これも脳科学の発展によってわかったことです。

これらのことから脳科学は医療分野の発展のために欠かせない学問の一つといえるでしょう。現在では治療することが難しい病気・障害であっても、脳科学が発展することで将来的に治療できる可能性があります。

教育方法の改善

教育の分野では、学習における脳の仕組みを理解することで、より効果的に学べる新しい教育方法の開発に役立てられています。

また、学習効果を高めるだけでなく、コミュニティーのなかで生活しやすくするための取り組みに応用している例もあります。

とある公立中学校では、脳科学のエビデンスに基づき授業改善を実施しました。
不登校やいじめの深刻化が問題でしたが、学校風土の改善によって一定の効果が得られています。

改善後は「授業が楽しいと感じた」「自分の考えを深めたりする時間や、自分自身で工夫して活動する時間があった」と回答する生徒も多く、脳科学によって効果的な授業へと改善できた例だといえるでしょう。

近年では教育の現場における課題に対し、脳科学をはじめ、関係する学問がどのような貢献が可能なのかという観点から研究活動が進められています。

障害者の生活の質の向上

脳科学は、脳の損傷や障害を持つ人々のための新しいリハビリテーション方法の開発にも役立てられています。

例えば、手足の麻痺などは脳からの「手足を動かせ」という指令がうまく伝わらないことが原因です。
近年では、脳科学によってどの部位にどのような指令を送れば手足を動かせるかが解明され、機械に脳の指令を検知させることができるようになってきています。

実際に、具体的な動作を指令する脳波の特徴をAI(人工知能)によって解析し、機械によって脳の指令どおりに手足の動きをサポートする、といったリハビリ機器も実用化され始めている段階です。

脳科学と機械工学などを組み合わせて医療分野に活用する例の一つともいえるでしょう。脳科学は障害を持った人々が、自立して充実した生活を送ることを助けるためにも活用されています。

商品開発や広報にも脳科学が必要な理由


ここまでご覧になった方のなかには「脳科学は医療分野だけのもの」「学問的な要素が強い」と考える方もいるのではないでしょうか。しかし、脳科学はあらゆる分野への活用が可能です。例えば、商品開発や広報においても、脳科学について理解を深めることで効率的に顧客にサービスの訴求ができるようになります。

脳科学を応用すれば人の無意識下のニーズを調べることができるため、それを満たす商品・サービスの開発も可能です。このことから、ビジネスの分野で脳科学を活用する「ニューロマーケティング」に注目が集まっています。

ニューロマーケティングとは

ニューロマーケティングとは、ヒトの脳血流量や心拍などの生体指標を計測し、無意識的・直感的な反応を数値化して、マーケティングに活用する手法です。つまり、脳科学をマーケティングに応用した手法といえるでしょう。

ニューロマーケティングは顧客が言語化することの難しい感性や本音に繋がる反応を数値化することができます。そのため、従来のアンケート手法では把握することが難しい顧客の無意識的なニーズに対して、訴求できるようになるため、効果が期待されています。

ニューロマーケティングでおもに使われる指標

ニューロマーケティングではおもに次の3つの指標が用いられます。

・主観指標(有意識の発信)
・生理指標(無意識の反応)
・行動指標(無意識の行動)

主観指標はアンケートやインタビューなどで顧客が意識をして発信する情報を調査・分析するものであり、従来のマーケティングは主観指標のみが用いられていました。ニューロマーケティングではそこに生理指標と行動指標が加わります。

生理指標は脳血流量・視線の動き・心拍数などを測定した値、行動指標は課題の成績や課題の反応時間などを測定し、顧客の無意識下の本音の反応を調査・分析するものです。

生理指標を測定するためには専門のデバイスが必要となりますが、近年では日常に比較的近い環境での計測を目指し、小型化・モバイル化が進んでいるため、ヘッドセット型の脳計測機器やメガネ型の視線計測機器などの装置が存在します。

ニューロマーケティングの事例


ニューロマーケティングは、2004年に神経科学者の研究グループがコカ・コーラとペプシ・コーラの選好に関する実験結果を報告したことから注目を浴びました。実験では、被験者の脳の血流をfMRIで計測し、ブランド名を伏せた場合と伏せなかった場合の選好を比較しました。

ブランド名を伏せた場合、コカ・コーラとペプシ・コーラを選択する比率はほぼ同程度でしたが、ブランドラベルのあるカップを提示する条件では、コカ・コーラがより選ばれるという結果が得られました。

さらに、コカ・コーラの絵を見せた後にコーラを飲んだ際の脳活動とコカ・コーラの絵を見せない状態でコーラを飲んだ際の脳活動を比較すると、コカ・コーラの絵を見せた後には記憶に関連する脳部位である、海馬と背外側前頭前野の活動が見られました。一方、ペプシの絵では同様の活動は見られませんでした。

この研究から、消費者の選好は味覚評価とブランドイメージの2つの要素から基づいており、広告などのコミュニケーション戦略によって選好が変化することが示されました。
参考:Neural Correlates of Behavioral Preference for Culturally Familiar Drinks(Neuron)

弊社のニューロマーケティング事例

東北大学と日立ハイテクによる脳科学ベンチャーである株式会社NeUでは、上記のようなニューロマーケティング手法を活用し、商品開発やマーケティングの支援を行っています。

株式会社バンダイが展開するベビートイシリーズ「ベビラボ®※1」では、子どもの成長に合わせた玩具開発を目指すため、のべ数百人の赤ちゃんの脳活動や行動を実際に計測し、赤ちゃんの『脳を育む※2』ための脳科学的な知見を提供し、商品開発に協力しています。
※1 「ベビラボ®」は株式会社バンダイの登録商標です。掲載されている商品は、バンダイが版権元から許諾を受けて販売しているものです。
※2  ベビラボ®は「好奇心を引き出し、遊びながら感じ、考えること」を脳を育むと考えています。

また、凸版印刷株式会社との共同研究で、認知脳科学などの科学的見地に基づいた、最適なデザイン開発の支援も実施しています。

まとめ

脳科学は脳の構造や生理作用などにフォーカスした学問です。

医療分野や学問的な要素が強いと考える方も多いかもしれませんが、機械工学やマーケティングなどさまざまな分野へ応用が可能です。

ビジネスの分野では、より効果的な商品開発や広報に活用できるとして脳科学×マーケティングの「ニューロマーケティング」が注目されています。

脳科学の発展は私たちの生活に大きな影響を与えるものです。
ニューロマーケティングのようにビジネスの分野でも欠かせないものとなっているため、この機会に脳科学について理解を深めてみてはいかがでしょうか。

Tag

CONTACT

お問い合わせはこちらからご連絡ください

お問い合わせ