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私たちの意識には、「顕在意識」と「潜在意識」の2種類があります。自身で自覚できているのは顕在意識のため、自覚していない潜在意識についてはあまり知る機会がないかもしれません。
近年では、潜在意識に注目することが、消費者のニーズや本音を引き出すことに繋がることから、マーケティングに活用する取り組みも積極的に行われています。
この記事では、潜在意識と顕在意識の概要から2つの意識の違い、マーケティングにおける活用事例などを解説いたします。
潜在意識とは無意識下での意識のこと
潜在意識とは、「無意識」とも呼ばれる、本人が自覚していない意識のことです。「意識」にはこの潜在意識と、自覚している顕在意識が混在しているため、私たちは自覚せずとも潜在意識の影響を受けて生活しています。
潜在意識には過去の多くの記憶が眠っているといわれています。例えば「夕飯はハンバーグにしよう」と考えたときにも、その結論に至るまでにこれまで培ってきたさまざまな記憶が潜在意識下で影響を与えています。
最終的にそれらの記憶をもとに「ハンバーグを食べよう」という結論に至るわけです。
また、生命活動における身体機能の管理も潜在意識が担っており、人間として生活する上で欠かせない要素となっています。
顕在意識とは
潜在意識は本人が自覚していない意識である一方で、顕在意識とは本人が自覚している意識のことを指します。「表面意識」と言われることもあり、「意識的」「故意」「自意識」などが類義となります。
顕在意識が司るものとしては、判断力、思考、理性、知性のようなものが挙げられ、ある程度は自身での制御が可能という特徴があります。
たとえば、「明日は8時に起きよう」「夕方この道は混んでいるから迂回しよう」などの判断・行動は顕在意識が行っています。
我々はこの顕在意識によって自分の思考や感情をコントロールしており、様々な意思決定を行っていると考えがちですが、実はその力関係は顕在意識よりも潜在意識の方が圧倒的に強いということが知られています。
いつも習慣的に右手でカバンを持っている人が、「左手で持つように変えよう!」と意識して決めたとしても、ふとした瞬間に右手で持っていた…というようなシーンは想像に難くありません。これは無意識(潜在意識)の働きによるもので、身に沁みついた習慣そのものを変えるのは、顕在意識だけでは容易ではないと言えるでしょう。
このように人間が社会で生きていく上で顕在意識は欠かせないものですが、こと人の意思決定における影響については、我々が思うほどには大きくないという事が明らかとなってきています。
潜在意識と顕在意識の違い
前述のとおり、潜在意識とは本人が自覚していない意識であり、対して顕在意識は本人が自覚している意識のことを指します。この意識の割合については、意外にも潜在意識がほとんどを占めていることをご存知でしょうか。
潜在意識は言葉にできないが顕在意識は言葉にできる
ハーバード大学の名誉教授であるジェラルド・ザルトマン博士によれば、「人間の行動や思考は95%が無意識である」としています。
つまり、意識の大半は潜在意識(無意識)で、顕在意識はわずか5%にとどまるということです。私たちの行動や考え方には、少なからず潜在意識が影響を及ぼしているといってよいでしょう。
また、潜在意識は言葉にできない意識ともいうことができます。
反対に顕在意識は言語化することが可能です。自身や消費者の行動原理を理解するためには、潜在意識を顕在化して言語化する必要があるといえるでしょう。
赤ちゃんは顕在意識がない
潜在意識と顕在意識をわかりやすく理解するために、赤ちゃんの言動を例に取ってみてみましょう。
赤ちゃんはお腹が空いたり、不快に感じたりすると泣き出しますが、これは本能によって呼び起こされる行動であり、意識的に行なっているわけではありません。
このことから、生まれたばかりの赤ちゃんには顕在意識が存在しないといわれています。
マーケティング調査から見る潜在意識と顕在意識の関係
潜在意識と顕在意識は、実際にはここまでに説明した以上により複雑に組み合わさっています。
例えば、マーケティング調査のため、主観調査にて該当商品を選択した理由を複数回尋ねると、徐々に回答の内容が変わってしまう場合があります。
最終的にはどの回答が本当のものかわからなくなる、ということも珍しくありません。
これは、回答者が潜在意識の影響を受けて直感で選択したにもかかわらず、顕在意識がもっともらしい理由を作り上げていることが原因です。
実際には潜在意識をしっかりと顕在化できているわけではなく、顕在意識によって潜在意識下の回答が捻じ曲げられてしまっている、ともいえます。
マーケティングにおいて潜在意識をうまく活用する方法
意識の95%は潜在意識が占めているということからも、マーケティングや商品開発では消費者の潜在意識を深掘る必要があります。
これは消費者のニーズの把握や、商品・マーケティング手法の効果測定を的確に行えるようにするためです。
しかし、前述の例のように従来型の主観調査では適切な回答が得られない可能性があります。
そこで近年注目されているものが「ニューロマーケティング」です。
ニューロマーケティングは、生体信号を測定して数値化することで消費者のニーズや本音を客観的に捉え、マーケティングに活用する手法です。
ニューロマーケティングでは、主観調査で顕在意識を測るだけでなく、脳・視線・心拍などの生体計測調査で潜在意識を数値化することが可能です。
他にも、回答や行動に要する反応時間を用いることで、消費者による潜在意識下の選択も数値として見られるようになるため、これまでの主観調査での課題を解決できる可能性があります。
潜在意識をマーケティングに活用している事例
株式会社NeUでは、脳科学の知見を商品開発やマーケティングに応用することを目的に、潜在意識を数値化するニューロリサーチを行っています。
NeUのニューロリサーチでは頭に装着するタイプの携帯型脳活動測定装置(fNIRS)を使用し、脳血流量の計測やアイトラッキングによる興味関心の有無や印象、気分など「感性」の部分を可視化します。
これにより、従来の主観的な調査手法では見えてこなかった潜在的な嗜好が数値化できるようになり、消費者の言葉にできない感覚的な違いや、無意識的な反応の客観化・定量化を実現しています。
前述で赤ちゃんには顕在意識が存在しないことに触れましたが、NeUでは赤ちゃんの潜在意識の計測に取り組み、のべ数百人以上の乳幼児に対するニューロリサーチを実施。赤ちゃんの満足度No.1 を目指す株式会社バンダイのベビートイ開発に長年にわたって協力しています。
言葉を話せない赤ちゃんの反応を、脳血流の変化や心拍変動、表情、声などから調査・検証することで、赤ちゃんの気分を切り替えるメロディの共同開発を行うなど、潜在意識を汲み取ることでより良い商品開発に繋げることを目指しています。
まとめ
潜在意識は本人が自覚していない意識を指します。ヒトの行動や意思決定において、潜在意識は、自覚している顕在意識よりも多くの割合を占めていることから、マーケティングや商品開発などの際には、潜在意識に注目することが重要です。
消費者が真に求めるモノを提供するためには、消費者の潜在意識について理解を深め、適切な対応を取る必要があります。
そのため、今後はニューロマーケティングの重要性がますます高まっていくのではないかと考えられます。